続き。(3)


ええっと‥これは…


これは ネギ多め なのでは?・・・


いや、これは背脂だけ多めなんだ、僕の目がオカシイんだ、僕のアタマがオカシイからそう見えるんだ、そうだ、そうに違いない!
…や、まてよ‥
どう見てもさっきのネギ多めラーメンとネギの量が一緒だ、これはネギ多めのラーメンだ、俺の目は間違ってない、うん。
俺のアタマはちょっとオカシイけどこれは ネギ多め だ、そうだ、そうに違いない!


僕の心の中で戦いが始まるや否や店員さんが『ネギ多め、お待たせしました!』
あぁ…
やっぱりそうなのか‥ノー背脂、ネギ on the 麺か…
僕は精一杯の笑顔で、「あの‥僕が頼んだのは ネギ多め ではなく、 背脂多め ですよほぉ〜」
と、小さい声で店員さんに言うてると、その様子を察してか店長が席までササっとやってきて大きな声で、『お兄さん!ごめんなさい!なにか不具合でも‥??』と。
…や、もう大きな声出すのやめて下さい〜、勘弁して下さい〜‥
こうなったら仕方ないので笑顔でしっかり始めっから経緯を説明。
どうやら注文を取りに来ていた店員さんは新人さんで、今回だけではなく今までも何度も間違いまくってる様子‥。
人間ですから誰しも間違いはあります。しかも新人、慣れてないんだから逆に間違って当たり前、全然仕方のない事。
僕はなんだか新人さんが可哀相になってきて、
「や、もうこれで良いです、これを食べますから…
や、というよりはあれだな、これが食べたいなぁ〜、あぁ、やったぁ〜ネギも多めだぁ〜、わはぁ〜い わはぁ〜い♪お散歩 わはぁ〜い♪」
もう、わけがわからんことになってきました。


そしてまたもや、店長を含む全員での大きな声での謝り攻撃が繰り替えされました。
…あかんあかん‥そんなんもう僕、ラーメンとチャーハンの味がわかりませんですよ…。
こんな雰囲気なって普通に食えませんって‥。あげくにこんな時にラーメンやチャーハン残したら絶対に感じ悪いやんか…
蛸の大好きな食の内の一つ、ラーメン。全然食ってる気分もないままに完食。


‥そして、
完食してから気付いた事がもう一つ。


セットに付いてくるはずの漬物が、きてない。


はい、もう絶対に言わないで帰ろう、うん、これはもう知らぬフリして黙って帰るべきだ、これを言うとこの店のことだ、なにやらサービス的な事を絶対してくるハズだ。
あかん‥、そんなん気ぃつかう、嫌だ、うん、よし、言わない、言わないぞーっ!
…や、まてよ‥
これを黙って帰ったら、あの新人さんの為になるのか?? これからもこの店で頑張ってもらうためには、やはりここは言うべきなのか‥??
や、まてまて‥今のこの空気で変に言うとさらに絶対おかしな空気になるハズだ、あぁ‥、でも‥やっぱりキッチリしたい! キッッッチリしたいねん!!!
ここはハッキリ言うた方が絶対に良いハズだ、うん、ここはやはり言おう、うん、でもお金を払ってから言おう、うん、そうだ、お金払ってから小声で新人君の先輩らしき店員さんに言うて帰ろう、よし、言おう、言うぞーっ!


レジにてお金を払ってから、その先輩らしき店員さんに小声で僕は囁いた。
「あのぉ‥セットの漬物がきてなかったですよ〜」


店員さんは笑顔のまま、その場で固まってしまった。それにつられてこちらも笑顔でそのまま固まってしまった。


そして…
笑顔で固まってしまっている先輩らしき彼と、目をそらすことが出来ぬまま…僕はそっと店を出た。


…一回目に持ってきはった時に ネギ多め の割にはネギ少ない‥??って思ったもん‥
だから聞いたのに。
「僕は 背脂多め ですよ〜?」って‥。


むぅー。
当分あの店いかれへんわ…



【完結】